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「まあ、それあ――」
この男が入つて来たとき、徳次の仲間だつた二人の馬喰は急にぴたりと話をやめた。そして、落ちつきのない眼で時々そつと男の方をぬすみ見た。男はぢろりと一瞥した。それは荒い皺が隈取りのやうに走つている顔だつた。だが、それきり三人の方を見ようとはしなかつた。
云ひ終ると、直造は叮重ていちように頭を下げた。
徳次は房一が顔を洗ふ間傍に立つて眺めていた。それからふいに訊いた。
「知吉さんはこれまで散々踏みつけられて来たんだから、自分が戸主になつてみるとこれまでの腹いせといふ気もあるんでせうな」
「あ、さうでしたな。一つ診ていたゞきませう」
男は病人から房一へぎろりと眼を移すと、
と、それまで鹿爪しかつめらしい表情をくづさずにいた仲買の富田が、突然半畳を入れた。どつと立つた笑ひ声で、聞きとれなかつた者までがふき出した。
「途中から――?」
「今日はほんの御挨拶に上つたので、いづれ又ゆつくり――」
「それに、永い間この土地をはなれていたもんですから、土地の事情にもすつかり疎うとくなりましてね、これは一つ、どうしても今後こちらのお力にすがらないことには立つていけないと思つている次第ですが――」
「随分早いのね」
「ほう、クレーといふのはカワラケのことかね」